茶室の様式には、主に草庵建築、書院建築などがあります。
草庵建築は、侘びの概念の確立と共に生まれた茶室で、閉鎖的な空間に床の間と点前座があるシンプルな茶室です。
書院建築は、貴人をもてなすために設計された格の高い茶室です。床の間と点前座以外に付書院、違棚など道具を飾る場所があります。
遠州流では、両方の様式の茶室を目的や用途に合わせて使い分けます。主に、茶事においては、初入の炭点前、会席、後入の濃茶迄は草庵の小間を用い、続けての薄茶から書院(広間)に移って行います。
茶会などでは、はじめて使用する茶席は事前に下見をし、茶室の様式を良く理解し、茶室に合った飾付けや取り合せをすることが大切です。今回は広間を例に、床回りの飾付の準備を進めてみましょう。
自在は掛物を床の間に掛ける際に、高さを調整するために使用します。竹製・木製・金属製のものがあります。大きい横物や双幅や三幅対などの場合で高さ調整が必要な場合は、大徳寺棒を使用すると良いでしょう。巻棒(軸巻)は床に対して掛物が長くて床に付いてしまう様な場合に、掛物の上部を巻いて使用します。事前に茶会の下見が出来れば、床の高さを測ったり、当日使用する掛物を掛けて試してみましょう。寄付や水屋(来客控室)にも掛物を掛けることがあるので、自在は必要な本数を用意します。矢筈は、手の届かない高所に掛物を掛ける際に使用します。
»「自在掛 金属製(55cm)」商品ページはコチラ »「自在掛 金属製(65cm)」商品ページはコチラ »「自在 木製黒真塗(40cm)」商品ページはコチラ »「自在 木製欅木地(40cm)」商品ページはコチラ »「自在 木製黒真塗(65cm)」商品ページはコチラ »「自在 木製欅木地(65cm)」商品ページはコチラ »「自在 胡麻竹一尺二寸」商品ページはコチラ »「自在 胡麻竹一尺八寸」商品ページはコチラ茶室の土壁(塗壁)には、木製や竹製の自在が良く合います。壁の色や掛ける物(軸・油絵・コンテンパラリーアートなど)によにって、自在の材質や色を選定するのも良いでしょう。
»「矢筈 黒竹(Y型)」商品ページはコチラ »「矢筈 黒竹(L型)」商品ページはコチラ »「矢筈 黒竹2本継(Y型)」商品ページはコチラ茶花を生ける際に必要な道具を準備します。水屋から一度に床の間など花を生ける場所に運べるように、花鋏・芽つみ鋏・細楊枝・霧吹・花水次などを長盆に載せます。床前にビニールシートやタオル(大)を敷き、花材や桶を置きます。花入の前後にタオル(大)を敷き、花入の左右に後ろで交差する様にタオル(小)を敷きます(霧を吹いた際に薄板や畳、壁に水がかからないように)。花を生けたら、最後に霧吹で花や葉に霧をかけます。もう一人の方が花入の後ろでタオル(小)を縦に持ち、霧が壁や掛物にかからないようにすると良いでしょう。水盤や釣舟などのに花を生ける場合は適宜剣山を使い、それを隠す為に錦石も用意します。
花入に合わせ薄板を準備します。青磁、古銅、砂張など、銅器・磁器類の真の花入には、真塗の矢筈、蛤、矢筈蛤端の薄板を、また、そろりなど花入の形によっては、四方盆を使うのも良いでしょう。伊賀、備前、信楽その他陶器などの<行><草>の花入には、いぢ塗り蛤端、木地の長四方、焼木地、その他変わり形の木地のものをそのものの雰囲気に合わせて使用します。向掛専用の一重切以外の竹などの草の花入には、木地の長四方、或は焼木地などを使います。掛物の本紙の形や、花入の姿によって、丸形を対照的に使用することもあり、また名物花入などの場合は、真塗矢筈蛤の四方盆を用いることもあります。
以上のような使い分けは基本であって、使用のときはあくまでも全体の調和を念頭において、臨機応変にあまり規則にこだわることのないよう、花入とその花材によって、それにふさわしい薄板を用いることが大切です。花を置く場所や状況に応じて新しい工夫や敷物などを使用しても良く、レースや民芸品などを調和良く使用するのも良いでしょう。『茶乃心を花に託して如月・弥生・卯月 小堀宗慶著より』
»「真塗 矢筈板」商品ページはコチラ »「真塗 蛤板」商品ページはコチラ »「焼杉角蛤板」商品ページはコチラ »「黒真塗3枚組」商品ページはコチラ »「松木地 拭漆花板」商品ページはコチラ »「真塗 七宝蒔絵薄板 中谷光哉作」商品ページはコチラ▼花入と薄板の組み合わせは、「茶乃心を花に託して」 1~5刊(セット) 小堀宗慶著をご参考ください。
»「茶乃心を花に託して」 1~5刊(セット) 小堀宗慶著 ページはコチラ »「花鋏」ページはコチラ »「芽つみ鋏 (草花用)」ページはコチラ »「唐金 花水注」ページはコチラ香合を飾る際に紫の無地の帛紗を四つ折りにして敷いて使用します。通常は香合の中にお香を入れますが、大寄茶会などでは床の間などに飾っておくので、練香(炉)の場合は椿の葉を小さく四角に切って載せ、香木(風炉)の時は香包に入れ香合の脇に置くのも良いでしょう。
奉書とは、楮(コウゾ)を原料として作られた白い厚紙のことを言います。幕府が公文書用の紙として使用していたため、 命令書という意味で奉書と云われています。茶会で、書院や琵琶床、違棚に硯箱や文房具飾りをする時にはそれらのものを奉書に載せて飾ります。出来るだけ複数枚重ねて厚みのあるようにするのが好ましいです。琵琶床には香盆に載せた香炉も飾ることもあります。
»「香盆溜真塗」商品ページはコチラ紫の拝見帛紗は、茶入・茶碗の箱書、茶杓の筒・外箱、その他書付のある箱書や仕服などの次第を飾る際に敷いて使用します。また、点前で拝見に出したお道具を客畳の上に並べてご覧に入れる時にも使います。大・小複数枚用意し、飾物の数や置き方に合わせて適宜枚数を用意してください。
奉書や帛紗を使用して飾ることは、道具を大切にする敬意の表れの一つで、道具の映り(見栄え)も一層良くなります。
硯箱の奉書一つとっても、有ると無いとでは道具の映りが大きく変わり、無ければ床の間全体の引き締まりも損なわれてしまいます。茶会当日は、忘れ物をしないように十分に気をつけましょう。
»「拝見用帛紗(大)」 ページはコチラ »「拝見用帛紗(小)」 ページはコチラお客様が座る場所に毛氈や座布団を敷きます。その他に毛氈は寄付などで道具(炭道具・箱書・煙草盆など)を飾る際にも敷いて使用します。床の間以外のスペースでは、毛氈を敷くことにより道具を飾るスペースを作ることができます。奉書や帛紗と同様に、道具を大切にする敬意の表れの一つで、道具の映りも良くなります。毛氈は厚みがあるため保温性・クッション性に優れており、足の疲れや建物・道具へのダメージを軽減してくれます。江戸間・京間があり、それぞれ長さがあります。利用に合わせて必要な巻数を準備しましょう。会場によっては貸出もありますので、下見の際にご確認ください。
»「毛氈 紺・赤 」 ページはコチラ »「毛氈(長) 紺・赤 」 ページはコチラ床の間という一つの空間にそれぞれの道具をバランスよく飾り付けをします。そこに遠州流茶道が求める「調和の美」があります。「調和」とは、 全体がほどよくつり合い、矛盾や衝突などがなく、纏まっていることを言います。亭主は 空間の使い方(構図)だけでなく、席の趣向や、格(道具・茶室)、色、季節、時代…様々なことに気を配り茶席を準備する事が大切です。茶道には「亭主七分に客三分」という言葉があります。来ていただくお客様の事を思い浮かべながら、茶席の準備をすることは亭主にとって大変楽しいひとときです。
本特集では、床飾りの準備を中心にご紹介しました。次回は、点前座の準備を特集する予定です。
どうぞお楽しみに…