本作は細長い本紙の中央に秋空に雁が渡っていく景を淡墨で描いています。減筆、略筆のなかにまさに余白を生かした構図は微妙に変化する濃淡に寂莫の趣を醸し出しています。画面からは今にも“雁が音”(かりがね)が聞こえてきそうな一幅です。
雨雲の よそのものとは 知りながら めずらしきかな 雁の遠声
・寸法
丈181.0㎝×幅30.0㎝
木箱
本幅は小色紙表装で裾のあたりにあしらい程度にとどめていますが、効果的に生かされた二匹の鈴虫が描かれています。本席の床に掛けても良し、また中廻しの苔色が草叢を表し今にも鈴虫の音色が聞こえてきそうな寄付きにも合う一幅です。
秋の夜に うれしきものは 鈴虫の ふりはえてなく 庭のくさむら
・寸法
丈172.0㎝×幅39.0㎝
共箱
砂張の釣花入は室町時代後期に流行したもののようですが、本作は舟としては幅が狭く木の葉のような形に砂張の地金が厚く打ち出されています。成型法は鎚起によるもので荒目の鎚起が素朴な風韻を醸し出しています。内部の花配りの抜き文様も面白いと思います。
・寸法
縦9.0㎝×横28.6㎝×高さ6.8㎝
「唐人笠」と名のついた籠花入ですが、古くは唐人(からびと)が被った笠に由来します。形状は当時の男子の頭(かしら)高く結い上げた髷(まげ)にかぶせるように使用し、祭礼などで唐人囃子などをする者や、または唐人飴をうる飴売りが使用したとされています。
・寸法
径21.8㎝×高さ36.2㎝
この小硯屏は文房(書斎)の賞玩物としてではなく、硯の向こうにおき据える実用として使われていたように想定できます。足は露胎になっており釉色は淡い青磁釉です。
・寸法
縦4.3㎝×横10.5㎝×高さ9.7㎝
この「青磁 硯屏」は緩やかな馬蹄形で表は龍に菊花の透かしが、裏側は図案化された牡丹に同じく菊花の透かしになっています。意匠としての龍文は中国の封建時代、龍は神の化身であり、また邪気を追い払う祥瑞は中国皇帝にとって権力の象徴でもありました。また、菊は中国では薬効があるとされ不老長寿とされます。厳霜をものともせずに瑞々しい香りを放ち、静かに且つ美しく咲き誇ることから、従来「高潔な節操」を持つ花だと言われています。また、菊花の放射状に整った花容は太陽を想起させることから「日華」という別名を持ち尊ばれました。
・寸法
縦8.5㎝×横18.5㎝×高さ16.0㎝
青白磁の李朝の墨床ですが、いわゆる墨が置かれた面には、剣先形を花弁とした図案化された花卉文が深く彫られ、凹面には青磁釉の釉溜まりがあります。花弁が均一でないところを見ると型押しではなく手彫りとみられます。畳付には焼成時の土塊(つちくれ)があり、民窯で焼かれたのか素朴なあじわいがあります。
・寸法
径6.4㎝×高さ3.9㎝
唐木の材に長八角の器体の表面には柘榴文と思しき花葉(かよう)が彫られ、側面のそれぞれの面をとった窓には愛嬌のある魚文が彫刻され色漆で彩筆されています。ところどころ色漆が枯れ丹色(にいろ)と黄漆が色を残していますが、当時の文人墨客のこだわりが窺えます。香道の銀葉台としても転用できる一品です。
・寸法
縦3.0㎝×横5.8㎝×高さ1.3㎝
硯に水を滴らせる道具の分類として形にはやかましいきまりがあり、水滴、水盂(すいう)、水注とあり、本作は黄交趾の鶉(うずら)形の水滴です。羽を収め蹲る姿は剽軽な表情で愛らしく、背に水孔があります。黄釉(きぐすり)のとろりした釉溜りが味わい深く、実に色どりの良い作品です。硯や墨床(ぼくしょう)などと併せて座辺に置きたい一品です。
・寸法
縦3.1㎝×横5.6㎝×高さ4.7㎝
瓢を倒した形姿で尚且つ膨らみが同じ大きさを呈しているのが面白く、持ち手がついて水滴を落としやすくしています。絵付は花葉(かよう)が描かれ南京赤絵に見られる緑、赤、紫の顔料で上絵付されています。水滴は働きが激しいので古い時代の物は希少です。
・寸法
縦3.2㎝×横7.7㎝×高さ4.8㎝
本作はいわゆる書鎮ですが鎮紙(ちんし)ともいいます。揮毫するとき料紙がうごかないようにする時に対の物は重宝です。長さ三寸余りの短冊形に僅かに入り隅にし、鏨(たがね)で菊唐草の文様に毛彫りで仕上げたあとに金で鍍金を施してあります。摘みの座金も菊形に細工し小ぶりながら愛らしい一品です。
・寸法
縦1.5㎝×横9.7㎝×高さ1.9㎝
兜釜
龍文堂製
形はまさに鉄兜形で戦国時代の雑賀鉢兜(さいがばちかぶと)の形に似せています。兜の鉢となる銅部分は箆押で鋲打ちを表し、また羽の部分は錣(しころ)を思わせる意匠をほどこしています。
鐶付は兜の左右に付く一対の「鍬形」(くわがた)を模していて、地金は鉄味そのままに硬質でややス立がありますが、蓋は一文字で趣き深い金味(かなあじ)です。本釜は少々、下手趣味ですが遊び心があるところがおもしろいと思います。
“ますらお”を願う端午の節句などの茶会に向いています。 ~勝って兜の緒を締めよ~
・寸法
径25.8㎝×高さ17.0㎝
瑠璃の色はコバルトから発色していて、蓋を取ると菓子鉢や会席の鉢としても使え、水指とした場合には、水の揺らぎがガラスの周りに落ちるブルーの影となり美しく映えるように思います。
・寸法
径19.6㎝×高さ13.2㎝
本作は真っ直ぐに切り立てた一重口に同周りには挽目が入り、道化釉の上から飴釉を重ね掛けしたところに黄釉が流れ、つららのような景色を作っているところが見どころとなっています。江戸時代の典型的な高取焼の特長を備え、小ぶりな形容ながら深い味わいが感じられます。棚に置いても良く取り合いますし、大板、中置などにもお使いになれます。
・寸法
径12.1㎝×高さ17.2㎝
本作は十五代 坂倉新兵衛の作で、釉膚は微かな赤みを呈した萩焼の枇杷釉の上に、白釉が混ざり合って吹雪のように釉が斜めになだれ落ちています。釉薬の溶け具合が均一でないためむしろそれが景色となっています。作行きは比較的自由で清々しく端然とした形姿を見せています。濃茶、薄茶共にお使いいただける茶碗です。
・寸法
径14.0㎝×高さ8.3㎝
本作は矢口永寿による仁清の写しですが、仁清よりもたらされた日本の陶芸史上かつてない華麗で独創的な作風を生み出した意匠は時代を経た今でも輝きを放っています。鮮やかで巧みな仁清の意匠性がまさに色絵を得意とする矢口永寿ならではの作と言えます。薄茶でお使いいただける茶映りの良いお茶碗だと思います。
・寸法
径12.6㎝×高さ8.4㎝
七宝透かしを台とした面に、より装飾性を高めるため鏨(たがね)を使って魚々子打ちに彫刻してあります。この技法は鏨の形状と彫り方の違いで変化をつけることができ、足となる部分は丸軸足になっています。台裏には“蔵六”の印が刻印されています。七宝文は小堀家の家紋でもあり、遠州流の茶席には最もふさわしい意匠と言えます。炉、風炉共にお使いになれます。
・寸法
径5.9㎝×高さ4.3㎝
白土で象嵌した上から釉が薄くかかり蝋を刷いたような独特の肌合いをかもしだしています。形容は下膨らみで腰下から裾は土見せとなっています。いかにも酒をたくわえてきたもののごとく侘びた味わいを出しています。会席の預け徳利としてもまた独酌としてもよろしい一品です。
・寸法
径10.9㎝×高さ13.6㎝
腰下から裾は淡い枇杷色を呈し、窯の中で釉薬がはじけた際の気孔であり石爆ぜも見られます。注ぎ口から口造りは僅かに欠いていて、その上から釉薬がかかっているところを見ると意図的な作意が感じられます。紅心宗慶宗匠はこの徳利の持つ姿から「月の旅」と銘をつけており口造りは月の満ち欠けを意味していると思われます。
・寸法
径9.8㎝×高さ16.3㎝